映画「シシリアン・ゴースト・ストーリー」ー美しく残酷すぎるファンタジー

互いに想いを寄せあう13歳のルナとジュゼッペ。だがジュゼッペは突如姿を消した…。過酷な運命を幻想的に描き出した物語。ルナの想いは届くのか…。

シシリアン・ゴースト・ストーリー

Source: https://movies.yahoo.co.jp/

 

 

公開:2017年

製作国:イタリア

上映時間:123分

監督・脚本:
アントニオ・ピアッツァ
ファビオ・グラッサドニア

出演:
ユリア・イェドリコヴスカ
ガエターノ・フェルナンデス ほか

 

 

 

 

※本記事にはネタバレ、結末が含まれています。

映画「シシリアン・ゴースト・ストーリー」ネタバレあらすじ

シチリアの小さな村、13歳のルナと同級生ジュゼッペの淡く初々しい初恋が始まろうとしていた。
ジュゼッペは賢くて陽気で、野犬に襲われそうになったルナを助けてくれる勇敢な少年だ。
ジュゼッペのバイクで2人は乗馬場へ出かける。
颯爽と馬を駆るジュゼッペに、ルナは想いを綴った手紙を渡し、2人はあどけないキスを交わした。

しかしその後ジュゼッペはバイクを置いたままいなくなってしまう。
家では、厳格なルナの母親がジュゼッペの家庭やルナの進学を理由に交際に強く反対した。
父親はルナに優しかったが高圧的な母親には逆らえず何も言えない。
自分の部屋のほかに家の中でルナの居場所はなかった。
それでも、親友のロレダーナと互いの部屋の窓からライトで合図を送り合い、ジュゼッペとの嬉しいニュースを報告する。

翌日、ジュゼッペは学校を欠席した。
昨日黙っていなくなったこともあって心配になったルナはジュゼッペの家を訪ねるが応答はなく、ただ2階の窓から彼の母親がこちらを見ていた。
その日、ルナの家の地下室には一羽の小さなふくろうが迷い込んでくる。

それから二週間以上もジュゼッペは学校を休んだが、教師に聞いても何も答えてくれなかった。
ルナは、野犬を追い払う時にジュゼッペが投げたリュックを森に拾いに行く。
散乱した本や文具をリュックに仕舞い、バラバラになったドラゴンボールのフィギュアを拾い集めて自分の部屋に飾った。
乗馬やゲームやサッカーが好きだったジュゼッペの夢いっぱいのノートには「ルナに宿題を教えてもらう」と記されていた。

リュックを返しにジュゼッペの家へ行くが、祖父に追い返される。
事情も聞けず中にも入れてもらえず、家の中からはジュゼッペの名を叫ぶ母親の声が聞こえた。
ジュゼッペの身に何かあったに違いないと確信するが、大人たちは何も教えてくれない。

ルナはロレダーナとともに、ドラゴンボールのフィギュアと同じように髪を青に染めて、ジュゼッペを探すビラを配って歩いた。
ロレダーナはジュゼッペの失踪に心無いことを言う男子生徒を叩きのめしたり、ルナが母親から青い髪を刈らされた時も一緒に髪を切ったりと、ルナに寄り添ってくれるのだった。
地下室にはまだふくろうがいた。
ルナはふくろうの餌のために、床に撒いていた殺鼠剤を取り除いてやる。

乗馬場でのあの日。
ジュゼッペはマフィアである父親の仲間たちに連れ去られていた。
警察と取引をして仲間を売り、身を隠している父親を引きずり出すために、ジュゼッペを誘拐したのだ。
彼はコンクリート壁の汚く粗末な一室で、足かせをされ監禁された。
あの日渡されたルナからの手紙を、犯人たちに見つからないよう秘かに持っている。
そこにはジュゼッペのことを日記に書いたと記されていた。ジュゼッペが悲しそうだった日のこと、その日お父さんのことを聞いたこと、海に誘われたが母親に許してもらえず行けなかった日のこと…。
気丈に振る舞うが、13歳の少年の心は過酷な現状に耐え切れずひとり涙を流すのだった。

Source: https://www.youtube.com/watch?v=Z0Zn6GaB1Wc

数か月が経ち、無事に進学したルナは父親と一緒に釣りに出かける。
母親の作った味気ない弁当を捨てジャンクフードを食べて湖で過ごした。
ひとり釣り糸を垂れるルナは、向こう岸にジュゼッペの馬を見つける。更にはジュゼッペの母親が見え、それを追って湖の中へ入っていく。
岸に上がると、森の中に一軒の建築途中の建物があった。
建物の中には、以前ジュゼッペの家で見かけたブタ面の男がいるが、いつのまにか消えてしまう。
地下室は階段まで水没していて、水の中を降りていくとそこにはジュゼッペの姿があった。
手を差し伸べようとするが、そこで父親に引き上げられる。
ルナは湖で溺れかけていたのだ。

ジュゼッペの監禁は続いていた。
まともな衣服も身に着けず顔も体も汚れ、伸びた髪は乱暴に切られ、足かせの跡には血が滲んでいる。
小さな窓から差す月明りで読むルナからの手紙の中には、今の状況とはかけ離れたかつての日常があり、未来があった。
思わず捨てようとするが捨てきれずに、愛おしげに手紙に口づけをするのだった。
窓から星を見つめ、少年は自由な自分の幻影を見る。
幻の中でルナと出会った。

監禁場所を移動する途中、車のトランクに押し込まれたジュゼッペは海の匂いを感じた。
暴れて外へ出してもらうがそこには海はなく、しかしジュゼッペが手に止まった蝶を放つと、やがて蝶は海に辿り着いた。

ジュゼッペは森の中の建築途中の一軒家に連れて来られる。
それはルナが湖で見た建物だった。
彼は、以前よりも更に劣悪な地下の部屋に監禁された。

Source: https://www.youtube.com/watch?v=Z0Zn6GaB1Wc

湖での一件が自殺未遂とされ、ルナはしばらくの間入院させられていた。
退院すると、ロレダーナや彼氏も協力して森の中で見た一軒家を探し始めるが、探し出すことはできなかった。
しかしその帰り、一軒家で見たブタ面の男が石材加工場からトラックで出てくるのを見かける。
ブタ男が関わっていると警察で訴えるが取り合ってもらえず、母親は平気で娘は病気なのだと言い、ルナを無理やり家に連れて帰るのだった。

ルナは家を抜け出して、石材加工場で男のトラックの荷台にこっそり乗り込んだ。
トラックは森の一軒家に着き、犯人たちが出払った後家に忍び込むと、そこにはかつての美しく健康なジュゼッペの姿があった。
2人は家を抜け出し、走って森を逃げ、湖のボートに身を潜める。
追っ手が行ってしまうと、2人はボートに横たわってキスを交わし、抱きしめ合った。

ジュゼッペは「一緒に来ちゃだめだ」と言って、眠ってしまったルナのもとを立ち去る。
そして地下室へ戻ると衰弱しきって横たわる自分を見つめ、その頬に手を当てた。
彼はもう起き上がることもできず、言葉を発することもなく、ただベッドに横になっているだけだった。
その後、首を絞められ、酸で溶かされ、粉々になった死体は湖に撒かれた。

一方、絶望しきったルナは地下室で殺鼠剤を食べた。
意識を失いかけた彼女のもとへ、ジュゼッペの小さな破片が流れ着き美しい姿を現す。
彼は「眠っちゃだめだ」とルナに言う。
するとふくろうが飛び立ちロレダーナの窓辺へ。彼女がそれに気づいて窓の外を見ると、ルナの部屋からライトの合図が送られてきた。
慌ててルナの家へ行き、地下室で瀕死のルナを発見する。
ロレダーナにも、ルナの手にそっと手を重ねているジュゼッペが見えていた。

一命を取りとめたルナは、ロレダーナたちと海へ来ていた。
向こうの方で、1人の少年が波に向かって走って行く。
ルナは笑顔で少年を見つめていた。

-マフィアに誘拐され779日の監禁後、絞殺され酸で溶かされた少年ジュゼッペ・ディ・マッテオ(1981/1996)に捧ぐ―

Source: https://www.youtube.com/watch?v=Z0Zn6GaB1Wc

引き寄せ合う無垢な魂の世界

本作は、1993年にシチリアで実際に起きた誘拐事件を基にしています。
ですが誘拐事件以外は創作で、実際にはルナのような人物もいません。
監督は、ジュゼッペの同級生たちのアンチマフィアの抗議デモの写真に写っていた女の子からルナの着想を得たということです。
あまりにも凄惨すぎる真実は、対極であるファンタジーとして昇華され、より衝撃的に胸に突き刺さります。
そして大人たちが一様に見て見ぬふりをする事件には、思春期の慟哭が重なり、より一層胸を締め付けるのです。

監督&キャスト

脚本・監督を手掛けたのはともにシチリア、パレルモ出身のアントニオ・ピアッツァと、ファビオ・グラッサドニア。
長編映画は「狼は暗闇の天使」(2013年)に次ぐ2作目。
本作ではダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞脚色賞を受賞しました。

また、主演のガエターノ・フェルナンデス、ユリア・イェドリコヴスカはじめ、同級生など主要の少年少女たちは皆まったくの演技初心者。
監督とキャスティング・ディレクターがパレルモの学校などで彼らを見出し、撮影前の2か月間はシチリアの農家でともに過ごしてワークショップを実施、彼らの個性や特性を脚本に活かしたそうです。

Source: https://www.youtube.com/watch?v=Z0Zn6GaB1Wc

映画「シシリアン・ゴースト・ストーリー」を見るなら

映画「シシリアン・ゴースト・ストーリー」を視聴できる配信サービスはこちら!
Amazon Prime Video
レンタル
U-NEXT
見放題
Netflix
hulu
見放題
dTV
TSUTAYA TV
見放題
ビデオマーケット
レンタル
Rakuten TV
レンタル

※2021年9月の情報です。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

 


Pocket