映画「ラースと、その彼女」-ライアン・ゴズリングのイタ哀しい純愛

内気な青年ラースが連れて来た恋人に、静かな町はちょっとした騒動に。彼を取り巻く人々との心温まるストーリー。

Source: https://movies.yahoo.co.jp/

 

 

製作年:2007年

製作国:アメリカ、カナダ

上演時間:106分

監督:    クレイグ・ガレスピー

出演:
ライアン・ゴズリング
エミリー・モーティマー
ポール・シュナイダー
パトリシア・クラークソン
ケリ・ガーナー ほか

 

 

※本記事にはネタバレ、結末が含まれています。

映画「ラースと、その彼女」のネタバレあらすじ

アメリカの小さな田舎町、ラースは兄夫婦が住む実家のガレージにひとりで暮らしている。
熱心に教会にも通い、不器用ながらも親切で心優しい青年だが、内気でコミュニケーションが苦手だ。
27歳で友達も恋人もいないラースを、兄夫婦は心配していた。
殊に兄ガスの妻カリンは、身重でありながらも、毎日食事を用意して打ち解けようとするがなかなか心を開いてもらえない。
職場の同僚のマーゴがラースに好意を持ち話しかけるが、彼はうまく接することができなかった。

ある時、ラースは「紹介したい女性がいる」と嬉しそうに兄夫婦の家へやってくる。
インターネットで知り合ったその女性ビアンカは、ブラジルとデンマークのハーフで、車椅子の宣教師。
兄夫婦は大喜びで迎えるが、ラースが連れて来たビアンカはアダルトサイトで販売されている「ラブドール」だった。
呆気にとられる兄夫婦をよそに、彼はまるで本物の女性のようにビアンカを扱い、会話をしている。
弟がついにイカレたと声を荒立てるガスをカリンがなんとか収め、ビアンカは母屋に泊めてもらうことになった。

兄夫婦は、ビアンカの長旅による健康状態を診てもらう名目で、ラースとビアンカを町のバーマン医師の元へ連れて行く。
医師によるとラースには精神疾患の症状もなく、ビアンカは理由があって現われたのだと、彼に合わせることを兄夫婦に提案した。
ラースはビアンカと楽しそうに話し、兄夫婦や職場の人にも明るく接するようになるが、兄夫婦は逆に益々心配になる。
困り果てた末、教会で牧師や年配者に相談すると、初めは皆困惑するも協力してくれることとなった。
後日、教会では車椅子のラブドールが新しい仲間として牧師から紹介される。
町の人々は戸惑いと好奇の目でラースとビアンカを見るが、教会での話し合いでラースを擁護してくれたグルナー夫人はビアンカに花を渡して歓迎した。

ラースは、子どもの頃の思い出の湖へ行き歌を歌ったり、両親の墓参りをしたり、一緒に巻き割りをしたりしてビアンカとの充実した時間を過ごす。
そんなある時、2人は職場の同僚の誕生日バーティーへ。
皆が事情を知っていたもののギクシャクし、ラースをからかう者もいた。
しかしやがてビアンカは女性たちの話の輪の中心になり、ダンスを楽しみ、皆に受け入れられていく。
それからというもの、町のブティックで働き始め、グルナー夫人の勧めで病院でのボランティアをしたり、マーゴたちと一緒に美容院でヘアカットをしたりと、ビアンカは町に溶け込んでいった。

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ある日のビアンカの治療で、ラースは人に触れられると痛いと医師に打ち明ける。
バーマン医師は、少しずつ彼の触覚過敏の治療を始めた。
カリンのお腹がもう目立つほど大きくなってきたことで子どもについて尋ねると、彼はビアンカの母親が彼女を産んだ時に亡くなったと話す。
しかし、それは彼自身のことだった。
そして出産に対する恐怖を感じた彼はパニックを起こしてしまう。

職場では、マーゴがほかの同僚と親しげにするのがどうも気に入らない様子のラース。
家に帰るとビアンカはグルナー夫人とボランティアへ出かけるところで、苛立ちはさらに増し、「僕の恋人なら僕に合わせろ」と声を荒らげて、ビアンカと喧嘩をしてしまう。
グルナー夫人は彼女にも人生があるとラースに諭し、ビアンカを連れて行った。
しかし気持ちが収まらないラースは、カリンに「みんな自分勝手で誰も僕を気にかけない」と怒りをぶつけてしまう。
カリンは「町中があなたのためにやっているのよ!」と思わず感情をあらわにするのだった。

その後、ラースはビアンカにプロポーズするも断られ、激しい言い争いをするようになり、2人の仲に亀裂が生じ始める。
ある日の仕事帰りに、マーゴに誘われて、ラースはビアンカを家に置いて2人でボーリングを楽しんだ。
彼はマーゴに惹かれていくが、ビアンカのことを考え、深刻な面持ちで「誤解しないでほしい」と言った。
マーゴはラースの気持ちを察し、「もちろんよ」と明るく笑顔で答える。
別れ際、ラースは自分から手を差し出してマーゴと握手を交わす。痛みを感じることはなかった。

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ある朝ラースは、ビアンカが意識不明だと取り乱して兄夫婦のところへやってくる。
救急車で病院へ運び込まれるも、重篤な状態だった。
バーマン医師は兄夫婦に、この状況はラースが決めたことだと告げる。
病院から連れて帰るとラースは一晩ビアンカに添い寝をした。
翌朝には家の前に町中から見舞いの花やカードが届けられ、町の婦人たちが集まりラースに食事を用意してくれた。

やがてビアンカは息を引き取り、教会ではビアンカの葬儀が執り行われた。
牧師は「彼女は思いもよらぬ方法で皆の心を動かした」と語る。
ビアンカを埋葬し、墓の前に佇むラースにマーゴが寄り添った。
「彼女みたいな人はいない」とマーゴが言うと、ラースは微笑んで、「少し歩こうか」と彼女を誘った。

ラースに寄り添う目線

クレイグ・ガレスピー監督は、「ラブドールに恋をする」という設定に半信半疑で、脚本を4年間寝かせていたそうです。
しかし本作は高い評価を得て、多くの映画賞を受賞し、第80回アカデミー賞脚本賞にもノミネートされました。

幼少期からのトラウマを抱えた主人公という重い題材、セックスドールが恋人という単なる出落ちになりかねない設定ながら、本作は見事にさらりと心温まる作品になっています。

純真で不器用な男なのだと分かっていても、ラブドールにご執心のラースの心情はなかなか理解できません。
しかし、視聴者と同じ目線である周囲の人々を丁寧に描くことで、いつの間にか皆と一緒になってラースに関わることに。
恋愛や他者との関係、新しい命の誕生など、様々な変化で、この愛すべき繊細な青年が成長していく姿に心を動かされます。

映画「ラースと、その彼女」のキャスト

本作はライアン・ゴズリングの、時に滑稽で時に哀しくもある絶妙な演技なくしては成り立たなかったでしょう。
感情を抑えながらもラースという青年の人となりが伝わり、ラブドールとの恋愛を純愛にしています。
込み上げながら踊る味のあるダンスや、真顔で演じる数々の笑いポイントも見逃せません。
本作で、第65回ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされました。

そのキャリアは子役から始まり、スマートなイケメン、影のある役など、コメディからシリアスまで幅広い役を演じています。
「きみに読む物語」(2004年)で注目を浴び、「ハーフネルソン」(2006年)で第79回アカデミー賞主演男優賞にノミネート。
数多くの話題作に出演し、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」(2012年)では共演したエヴァ・メンデスと結婚。「ロスト・リバー」(2014年)では監督デビューを果たしました。
2016年の「ラ・ラ・ランド」で第89回アカデミー賞主演男優賞ノミネート、第74回ゴールデングローブ賞 主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。

Source: https://eiga.com/

カリンを演じたエミリー・モーティマーは「マッチ・ポイント」(2005年)や「シャッター アイランド」(2010年)に出演している実力派。「マイ・ブックショップ」(2016年)「死霊船 メアリー号の呪い」(2019年)などで主演しています。

ラースの兄ガスのポール・シュナイダーは「ジェシー・ジェームズの暗殺」(2007年)などに出演し、「ベイビー・メイク 私たちのしあわせ計画」(2012年)で主演。ほかテレビシリーズで活躍する俳優です。

バーマン医師約のパトリシア・クラークソンは、「エデンより彼方に」(2003年)でその演技力を高く評価され、「エイプリルの七面鳥」(2003年)ではアカデミー賞助演女優賞にノミネート。
マーゴを演じたケリ・ガーナーは「アビエイター」(2004年)「サムサッカー」(2005年)などに出演しています。

そしてビアンカを演じるビアンカは、恐らく最初で最後の出演作品でしょう。
本作ではメイクの濃さなどにより9つの顔を使用し、なんと専用のトレーラーまで用意され、出演シーン以外は私服でくつろいでいたということです。

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